福岡県北九州市での柔道との出会い。身体性に飛び込む冒険。挑戦、発見、達成という経験。
やんちゃでエネルギー溢れる6歳だった私。親は私を柔道場に連れて行きました。もし、あの日、道場の扉を開けていなかったら、私の人生はどう変わっていたのでしょうか?とても厳しい先生のもと、日々の稽古に一生懸命向き合っていなければ、私の有り余るエネルギーはどこに向かっていたのでしょうか。たぶん、周りに迷惑をかけ、自らも苦しむ人生を送っていたかもしれません。
しかし、道場での日々は、私にとって全く新しい世界の扉を開きました。初めて先生と組んで技を掛け、「ドンッ」と大きな音を立てて先生を投げ飛ばした時のあの成功感は、今でも鮮明に覚えています(先生は上手に投げられてくれました)。学校では、そんなことをしたら大目玉ですが、道場では、その繰り返しがむしろ奨励されました。柔道に夢中になり、毎日が充実していきました。
それから、私は中学、高校、大学と柔道を続け、社会人になってもその道を歩み続けました。途中で出会った素晴らしい指導者たちは、私にただ勝つことだけでなく、「精力善用」「自他共栄」「相助相譲」といった、人生における大切な価値観を教えてくれました。これらは柔道の創始者・嘉納治五郎師範が遺した、今も私の行動指針となる言葉です。
幼い私にとって柔道は単なる「スポーツ」の一つで、特別な意味を持っているとは思っていませんでした。しかし、その一歩が、私の人生に計り知れない価値をもたらすことになるとは、その時の私には想像もつきませんでした。
スポーツに打ち込むことで、人はどれほど成長し、変化できるのか――私の経験は私にとって最も説得力のあるものです。柔道を通じて、私はただ技を習うだけではなく、人として大切な価値観や生き方を学びました。もし、道場で出会ったあの素晴らしい指導者たちとの出会いがなかったら、今の私はおそらく存在しないでしょう。
私が学んだことは、単に技術の習得以上のものでした。それは、人生を豊かにする深い教訓であり、挑戦する勇気、失敗から学ぶ大切さ、そして何よりも、自分自身や他人を尊重することの意味を教えてくれました。これらすべてが、私が今、この道を選んで本当に良かったと心から思える理由です。
私が体験した変化、学び、そして成長は、偶然の賜物ですが、とても価値があるものでした。このようにして得た経験を偶然で終わらせたくありません。それを共有し、次世代に伝えることで、さらに大きな価値を生み出すことができると信じています。
新型コロナウイルス感染症の影響で世界が大きく変わる中、オリンピックが開催され、改めてスポーツの価値が問われました。「スポーツの価値」と一言で言っても、その真髄は簡単には語れません。しかし、私たちは、スポーツを通じて人々がどれほど豊かに、強くなれるかを実感してほしいと願っています。NPO法人スポーツコーチングアカデミアでは、人々がスポーツの真の価値を実感し、それを日々の生活に活かしていけるよう、指導者を育て、支援する活動を続けていきます。
私の物語が価値の実感の一例です。私たちと一緒に、スポーツが持つ無限の可能性を探求し、多くの人々にその価値を伝えていきましょう。
NPO法人スポーツコーチングアカデミア
理事長 石井孝法